改修もしない使用年数が長いビルは水の苦情が多い
1975年頃よりも以前に建築されたビルのうち、上水(飲料水)についての苦情で最も多いのは水の濁りです。
濁りの状態は赤水、青水および黒水に大別できますが、クレームの全てが赤水と言ってよいほどです。
赤水は水道水質の異常のひとつです。原因は以下の物質の混入です。
1. 鉄管の錆
2. 鉄バクテリア
3. マンガンと鉄錆
ビル内の赤水は給水管(鉄管)に発生する錆(腐食)によるものです。
改修工事をしない使用年数が長いビルに赤水が発生しやすいのは、1960年代以前の給水管の主流が亜鉛メッキ銅管で、かつ貯水槽も銅板製が多く使用されたからです。
ともかく鉄は水に弱く、水と作用して腐食(錆の発生)しやすく、1960年代以前は赤水を防ぐ給水管用材としては、当時の技術水準から鋼管に亜鉛メッキを施した亜鉛メッキ鋼管しかありませんでした。
亜鉛メッキが施してあっても、使用すれば水と作用して亜鉛が溶け出し鋼が露出してきます。
管の接合部はねじ込み式接合によるねじ切りで、施設工事当初からこの部分の亜鉛メッキは破壊されて鋼が露出します。
鋼(鉄)は水との電気化学的作用によって酸化(腐食)され、赤褐色状のいわゆる錆こぶを発生し、これが水に溶出して赤水となります。
上水が赤水化すると塩素を多く消費するので、毎週の残留塩素測定の結果値でも分りますが、水の赤水状態は視覚で簡単に判断できます。
視覚による赤水の状態を判断する目安は次のとおりです。
1. 軽度の赤水
(1) オフィスなどで休日の翌朝など、最初の給水栓使用時に短時間淡い赤い水が出る。
(2) 常時使用しない給水栓を開くと赤い水がでる。
(3) 給水栓から出る水は着色していないが、洗面器などに落ちた水滴の跡が赤茶になる。
2. 中度の赤水
(1) 毎朝最初は赤い水が出る。
(2) 断水などのトラブルの後に相当な赤く濁った水が出る。
3. 高度の赤水
(1) 常時淡い赤い水が出る。
(2) 給水栓を全開すると錆の微粒子が出る。
(3) 出てくる水が臭い。
(4) 給水管の水の流れが悪い。
赤水が発生した場合の抜本的な対策としては、給水配管を硬質塩化ビニルライニング鋼管や硬質塩化ビニル管といった、FRP製(強化プラスチック樹脂製)に交換することです。
給水設備全体を腐食しない材質のものに交換する必要があります。
費用や工事などの関係ですぐに実現できない場合は、上述の1.軽度の赤水 と 2.中度の赤水 の場合には、防錆剤の添加によって腐食の進行を遅らせることができます。
また、3.高度の赤水 の場合には、化学薬品洗浄による配管内の錆除去を行うといった暫定措置をとることもあります。