ビル内における上水は
塩素消毒しなければならない
ビルで用いる飲料水(上水)は、水道局などの水道事業者から供給される所定の水道基準に適合する安全で衛生的な水質の水道水です。
しかし、この水道水を上水として使用する場合は、ビル側で塩素消毒を実施することが義務付けられています。
安全衛生的な水道水を使用するのにビル内で再び塩素消毒しなければならないのは何故でしょうか。
ビルにおいては、大規模な給水設備を経なければ上水を使用することはできません。
すなわち、水道水をいったん受水槽で受水して貯留し、陽水ポンプで屋上などの高地水槽(給水タンク)に揚水、貯留し、この給水タンクから各階へ給水して水を使用するのです。
水道局から供給された水道水は、ビル内の給水装置で貯留、流動を繰り返し、相当時間を経過しなければ実際には使用できないのです。
このように、実際に消費できるまでに時間が掛かると、水道局から供給された水道水中の消毒(滅菌)作用をしている残留塩素が滅菌(消毒しつくされ)してしまいます。
このため、細菌が発生して増殖すると共にその死骸も発生し、水中の溶存酸素(*1)もなくなり、悪臭を放つなどの不衛生な水の状態、いわゆる死水(しにみず)(*2)化するわけです。
特に受水槽や給水タンクの水が長時間滞留して流動しないと残留塩素は消滅し、かつ温度が高いほど、紫外線が強いほど失われやすいのです。
ビルでは、給水設備内の水道水が不衛生な死水化、水質劣化を起こしやすいので、これを防止し、安全で衛生的な水質を維持する必要があります。
このため、塩素による消毒、つまり上水の塩素消毒(塩素滅菌)を実施し、かつ、残留塩素が給水設備の末端である給水栓において遊離残留塩素が0.1mg/ℓ(結合残留塩素の場合は0.4mg/ℓ)以上に保つようにすることが義務付けられています。
また、ビルにおける塩素消毒としては次亜塩素ナトリウムが用いられます。
(*1)
溶存酸素:
水中に溶解している酸素。自然界では大気中の酸素の分圧に比例して水中にも溶解している。単位面積当たりの水に溶解している酸素量(㎎/ℓ)で表す。
(*2)
死水(しにみず):
給水管内や受水槽内で長時間流動することなく残留塩素が消失し、細菌が発生しやすく飲料水として不適格となった水。